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2023.04.06

満室の窓口

事故物件ってどこまで告知する!?人の死の告知ガイドラインとは?

国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。

これにより、どのような事案が事故物件とされるのか、いつまで空き室を継続するのか、これまで曖昧だった基準が設けられるようになりました。

そこで今回は「人の死の告知に関するガイドライン」をもとに、告知しなくてよい事案と、それに合わせた不動産運用のヒントについて説明します。



<目次>
1.人の死の告知ガイドラインとは
2.告知しなくてよいケースとは
ケース①(対象物件の賃貸借・売買取引)
ケース②(対象物件の賃貸借取引)
ケース③(隣接物件や、共用部で事件や事故のあった賃貸借・売買取引)
3.高齢者にも受け入れ幅が広がる
4.まとめ


1.人の死の告知ガイドラインとは

「人の死の告知に関するガイドライン」とは、過去に人の死が生じた(関わった)不動産物件において、宅地建物取引業者が告知するべきかどうかをまとめたものです。

いわゆる「事故物件」と呼ばれるものの基準を示したものになります。

ガイドラインが公表される以前は、事故物件に関して明確な定義や判断基準はありませんでした。

過去の裁判例では、不動産の取引目的や事案の内容、経過時間、近隣住民の周知などから住む人の「心理的瑕疵」にあたるかどうかが判断されてきましたが、実際の取引では個々の考え方や受け止め方が異なり、告知するかしないかなどの対応はまちまちでした。

そのため明らかな事故物件事案でないものであっても告知し、円滑な取引や収益化を阻害されたケース、反対に告知すべきなのにされなかったために借主が後から知ってトラブルに発展したケースなどもあります。

また原因に関係なく、人の死が関わる物件につながることを懸念して高齢者の賃貸契約を敬遠する傾向もみられました。

そのような背景を受け、政府は一定の基準を設けるガイドラインを発表し健全な不動産取引を促しています。

ちなみに不動産というと住宅、オフィス、店舗などさまざまですが、このガイドラインでは人の死に関わる事案が生活の快適性や住み心地に影響すると考えられることから、住居用不動産を想定して作られています。



2.告知しなくてよいケースとは

それでは、ガイドラインの示す「告知義務のない」ケースとはどのようなものか、その判断基準をみていきましょう。


ケース①(対象物件の賃貸借・売買取引)

・自然死    老衰・持病などによる死亡

・不慮の事故  転倒・転落、食事中の誤嚥などによる死亡、入浴中の溺死

※自然死や不慮の事故については、基本的に告知の必要がありません。


ケース②(対象物件の賃貸借取引)

・対象となる物件で①が発生し、発見の遅れなどから特殊清掃などを行い、事案発生から概ね3年が経過したもの

・対象となる物件で①以外の事案が発生し、概ね3年が経過したもの

※事件や事故があっても概ね3年が経過すれば告知義務は発生しません。


ケース③(隣接物件や、共用部で事件や事故のあった賃貸借・売買取引)

・①とそれ以外が発生した物件に隣接する住戸

・集合住宅の日常的に使用する共用部分(廊下・階段・エレベーターなど)で①以外の事案が発生し、概ね3年が経過したもの

・集合住宅の日常的に使用しない共用部分(ボイラー室など)で①が発生し、特殊清掃を行ったもの

・集合住宅の日常的に使用しない共用部分でそれ以外が発生したもの

隣接住戸や通常使用しない共用部の場合、基本的に告知義務はありません。

それ以外の共用部の場合、概ね3年が経過すれば告知義務がなくなります。

いずれのケースでも、ガイドラインでは死亡原因に関わらず3年が経過していれば告知の必要はありません。

ただし、その事件や事故の大きさや周知性、社会に与えた影響などによっては告知の必要性も考慮されるとしています。

また、事案が発生して3年以内のものなどは買主・借主に対して告知する義務があります。

発生時期や内容、特殊清掃などが行われた場合もその旨伝えなければなりません。

事案の詳細が不明の場合でも、無回答にするのではなく不明と告知しましょう。



3.高齢者にも受け入れ幅が広がる

ガイドラインでは、自然死や不慮の事故による死亡は一般に起こり得ることとしています。

これまで自然死、孤独死のような事案はマイナスのイメージに捉えられる傾向がありましたが、基本的には事故物件と判断されなくなるため、課題となっていた高齢者の入居が受け入れやすくなると考えられます。

少子高齢社会が進む日本では、空き室対策としても高齢者を受け入れやすい体制を整えていくことが求められるでしょう。

高齢者入居への対策として、見守りサービスなどを活用する方法があります。

見守りサービスには「訪問型」や「カメラ型」があり、自然死などの発見の遅れを回避できます。

また「孤独死保険」の加入なども検討できます。

孤独死保険は、孤独死によって生じる家賃の損失や居室の特殊清掃などの回復費用を補償するものです。

これまでは、空き室や家賃減額がいつまで続くか不透明で保険料の設定も短いものになっていましたが、ガイドラインによって3年の期間が明示されたことから、保険会社も告知が必要な期間をカバーしてくれる保険プランを提供できるようになりました。

サービスや保険の負担は増えますが、備えることでその後に発生する可能性のある大きなリスクを軽減できます。



4.まとめ

「人の死の告知に関するガイドライン」は、過去の実務や判例から妥当とされる基準をまとめていますが、今後の賃貸借・売買取引によっては変化する可能性もあります。

ただ考え方、受け止め方は人それぞれのため、個々の取引においてはトラブル防止のため人の死に対するそれぞれの認識を共有し、対応していきましょう。


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