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2025.01.16

満室の窓口

4号特例の縮小について|2025年建築基準法改正によるリフォームへの影響

2025年から施行される「4号特例」の適用範囲縮小は、不動産業界にとって重要な転換点となります。

この変更は、建築物の省エネ性能や耐震性の向上を目的としており、これまで特例に該当していた建物やリフォーム計画にも大きな影響を与えることが予想されます。

特に、不動産オーナーにとっては「既存物件の維持管理」や「新たな投資計画」を見直す必要がある重要な局面となります。


本記事では、4号特例の基本的な概要から改正の背景、縮小による具体的な変更点までをわかりやすく解説し、オーナーとしてどのように対応すべきかをご提案します。

法改正による変化をチャンスと捉え、不動産価値を高めるためのヒントを見つけていきましょう。


<目次>
1. 4号特例とは
2. 4号特例が縮小される背景
 ー省エネ基準の義務化
 ー耐震性の強化
3. 4号特例の縮小による変更点
 ー建築物の区分が変わる
 ー対象となる審査項目が増える
 ー構造計算書と省エネ関連の書類を提出
4. 建築確認申請が必要となる大規模リフォームの定義
5. 4号特例の縮小によるリフォームへの影響
 ーメリット
 ーデメリット
6. まとめ


1. 4号特例とは

4号特例とは、建築基準法において小規模な建築物(4号建築物)を対象に、一部の建築確認審査を省略できる特例措置のことです。

正式名称は「審査省略制度」とされており、特に木造二階建てや平屋建ての住宅などが対象となります。

この特例は、建築士が設計した場合、新築や増築、リフォームの際に一定の審査を省略できる点が特徴です。

また、大規模な改修や模様替えにおいても、建築確認申請が不要となる場合があります。

ただし、適用されるのは都市計画区域や準都市計画区域、または都道府県知事が指定する特定の地域内に限定されます。


建築基準法第6条第1項では、建築物を1号から4号に分類しており、4号建築物は「木造2階建て以下」「木造平屋建て」といった比較的小規模な建築物を指します。

この分類の中で、特に4号建築物に関する特例措置が「4号特例」と呼ばれています。


建築基準法6条1項による建築物の分類

分類概要主な該当建築物
1号建築物特殊建築物で、用途部分が200㎡を超えるもの学校、病院、劇場、百貨店など
2号建築物木造で、階数が3以上または延べ床面積が500㎡超、高さ13m超、または軒高9m超のもの木造3階建て建築物など
3号建築物木造以外の構造で、階数が2以上または延べ床面積が200㎡を超えるもの鉄骨造またはRC造の2~3階建て建築物など
4号建築物上記1~3号に該当しない建築物木造2階建て建築物、木造平屋建て建築物など


2. 4号特例が縮小される背景

ー省エネ基準の義務化

2025年4月から、省エネ基準への適合がこれまでの任意から義務化されます。

省エネ基準は住宅の断熱性などに関する基準を定めたものでしたが、これまでは適合が義務ではなかったため、住宅ごとに断熱性能に大きな差が見られました。

法改正により、すべての住宅で省エネ基準を満たす家づくりが求められるようになります。

また、建築確認申請時には省エネ関連書類の提出が義務化されるため、省エネ基準への適合が確実に確認される仕組みとなります。

この改正が4号特例縮小の主な理由の一つとされています。


ー耐震性の強化

地震や台風などの自然災害に備えるため、住宅の耐震性向上が強く求められています。

改正後は木造2階建てを含む新2号建築物に対して、構造計算書の添付が義務付けられます。

これにより、断熱材の使用や設備追加で増加した住宅重量に見合う強度を確保し、安全性の高い住宅の建築が促進されます。


3. 4号特例の縮小による変更点

ー建築物の区分が変わる

2025年4月の建築基準法改正により、4号建築物の枠組みが廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」の2つに再分類されます。

出典:国土交通省HP


新2号建築物

木造2階建てや延べ床面積200㎡以上の平屋が該当。

改正後は4号特例が適用されず、これらの建物については全地域で建築確認が必須となります。

また、大規模リフォームを行う際も、建築確認が必要です。


新3号建築物

延べ床面積200㎡以下の木造平屋が該当。

従来通り審査省略制度の対象となり、大規模リフォーム時の建築確認申請は不要です。


ー対象となる審査項目が増える

4号特例が縮小されたことにより、新2号建築物では以下のような項目が審査対象となります。

・屋根や外壁の防火性能

・居室の採光や換気の基準

・建築材料の品質管理

これまで審査が省略されていた項目も含まれるため、安全性や性能基準の確認がより厳格化されます。


ー構造計算書と省エネ関連の書類を提出

4号特例の縮小に伴い、建築確認申請時に提出する図書の内容が一部変更されます。

新3号建築物については、これまでの4号建築物と同様の図書が必要となり、大きな変更はありません。

しかし、新2号建築物では、追加の書類が求められるようになります。

新2号建築物では、従来の確認申請書や図面に加えて、構造計算書や省エネ関連の書類が新たに提出必須となります。

これにより、建物の耐震性が十分確保されていることや、省エネ基準に適合していることを、具体的な設計図や計算書で証明しなければなりません。


確認申請図書

仕様表(計画概要、付近見取図、内部/外部仕上表)

求積図、地盤算定表、配置図

平面図

立面図、断面図

構造詳細図

床面積、見付面積計算表

壁量判定 兼 耐力壁図

四分割法判定

柱頭柱脚金物算定(N値計算法)

給排水衛生・電気設備図

計算書(採光、換気、省エネ)

設計内容説明書(省エネ)

機器表(省エネ)

参考:改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅等の確認申請・審査マニュアル|国土交通省


4. 建築確認申請が必要となる大規模リフォームの定義

2025年の建築基準法改正により、4号建築物のカテゴリが廃止され、2階建て以下の木造戸建て住宅でも確認申請が必要となるケースが拡大されます。

これにより、非木造住宅や3階建て以上の木造住宅と同じ扱いとなり、リフォームやリノベーションの際には確認申請が求められるようになります。

ただし、屋根や外壁の改修は「大規模修繕」に該当しないため、特定の条件を除き、確認申請は不要です。


大規模リフォームにおいては、建築基準法で「大規模の修繕・模様替え」として定義されています。

具体的には、主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)のいずれか一つ以上について、その過半を改修する工事が該当し、この場合には建築確認申請および工事完了検査が必須となります。

一方で、以下のような構造に影響しない小規模な工事は、改正後も確認申請の対象外です。

・水回りのリフォーム(キッチン、トイレ、浴室など)

・内装工事(壁紙の張り替え、構造に影響しない床の張り替えなど)

・外装工事(屋根や外壁の塗装、カバー工法など)

・バリアフリー化(手すりやスロープの設置など)

ただし、リフォームが確認申請の対象となるかどうかは、リフォーム会社の判断に委ねられることも多いため、施主自身も法改正内容を理解し、必要に応じて複数の会社と相談することが重要です。


5. 4号特例の縮小によるリフォームへの影響

ーメリット

1. 構造安定性の向上

4号特例の対象範囲が縮小されることで、大規模なリフォームを行う際に設計審査が義務化されます。

この審査によって、建物の耐震性や構造安定性が確保されるため、住む人が安心できる安全な住居が増えることが期待されます。

特に、これまで建築確認申請の対象外であった木造2階建ての住宅についても、法改正後は耐震性を含む構造的なチェックが行われるため、リフォームによる住環境の安全性がさらに向上するでしょう。


2. 品質向上

建築確認申請が義務化されることで、施工過程において行政や審査機関によるチェックが加わるため、工事の品質が高まります。

これにより、省エネリフォームや最新の技術を取り入れた工事が促進され、環境にも配慮された住居の実現が可能となります。

特に大規模なリフォームを考える際、耐震性や断熱性能の向上を含む改修が必要な場合でも、申請と審査を経ることで設計内容の適正性が確認され、信頼性の高い工事が行われるようになります。

結果として、住む人が安心して長期間暮らせる高品質な住環境が提供されます。


ーデメリット

1. 工期の延長

4号特例の縮小により、リフォーム工事を行う際には建築確認申請が必要になるケースが増えます。

建築確認申請では、設計図書や関連書類を準備し、審査機関に提出する必要があります。

申請には一定の時間がかかるため、全体的な工期が延長される可能性があります。

特に、大規模なリフォームを計画している場合、申請の準備や審査結果の待機時間が工期を遅らせる要因となり得ます。

そのため、リフォームを進める前に、事前に工期のスケジュールを慎重に見積もることが重要です。


2. 費用増加

建築確認申請に伴い、申請料や書類作成に必要な人件費など、追加のコストが発生します。

これにより、リフォーム全体の費用が従来よりも高くなる可能性があります。

特に、専門的な知識を要する書類作成を外部に委託する場合や、耐震性向上のための設計変更が必要な場合には、予想外の出費が発生することもあります。

リフォームを進める際には、こうした費用面の増加を事前に想定し、予算計画に余裕を持たせることが求められます。


3. リフォームの制約

4号特例の縮小により、再建築不可の物件に対するリフォームには特に大きな影響が及びます。

再建築不可の物件とは、接道義務(敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たさないために建て替えができない敷地のことを指します。こ

うした物件において、従来はリフォームやリノベーションによって新築同様の状態にすることが一般的でした。

しかし、4号特例の縮小後は大規模なリフォームを行う際に確認申請が必要となるため、リフォームが難しくなる可能性があります。

さらに、確認申請に対応できるリフォーム会社が限られる点も課題です。

全てのリフォーム会社が新しい基準や手続きに対応できるわけではないため、リフォームを依頼できる選択肢が減少し、計画が遅れる可能性もあります。


6. まとめ

4号特例の縮小は、不動産オーナーにとって、物件の安全性や品質を向上させる一方で、工期や費用、リフォームの自由度に制約をもたらす重要な法改正です。

この変更により、大規模リフォームを行う際には建築確認申請が必要となり、耐震性や省エネ性能が求められる一方、適切な業者選びや資金計画がより重要になります。

しかし、この改正は長期的に見れば、物件の価値を守り、入居者から信頼される資産運用につながるものです。

不動産オーナーとしては、法改正の意図を正しく理解し、必要な手続きや準備を怠らないことで、競争力のある物件を維持・向上させることができます。

今後のリフォーム計画では、法改正を踏まえた上で、耐震性や省エネ性能に対応した改修を積極的に検討するとともに、建築確認申請に精通した専門業者をパートナーとして選ぶことが鍵となります。

オーナーとしての物件管理の質を高める良い機会と捉え、積極的に対応していきましょう。



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