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土地活用

2018.05.30

満室の窓口

二項道路に関する注意点

皆様、2項道路ってご存知ですか?「セットバック」なんてワードと一緒に出てくることが多いですね。

そもそも二項道路という名称は、この道路の種類が建築基準法第42条第2項の規定された道路であることに由来しています。

建築基準法第42条とは、建築に係る法令の中でも「道路に関する事項」について記された条項であり、ここで定められた『建築基準法上の道路』に接する土地でのみ建築行為が行えるとされているのです。

つまり、建築基準法が施工される以前から既に道路として使われていた幅員4m未満の道については、道路の中心から2m下がれば(セットバックすれば)、建築行為が行える道路(建築基準法上の道路)として認めます、という意味となります。

なお、この二項が定められた背景には、当時の日本には狭い道が数多く存在していたため、火災などが発生した際に消防車の通行が出来ない事案が数多く発生しており、こした被害を少しでも減らそうとの趣旨があったようです。

こうして作られた法令により、二項道路に面した土地を持つお宅は、建替えに際してセットバックの義務を負わされることとなりました。

また、こうした経緯で定められた道路であるため、二項道路には公道である場合も、私道である場合もある上、セットバックした部分は道路の形状はしているものの、所有者はそのままということになりますから、

幅員4m道路の真ん中1m幅は公道だが、その他の部分(両側1.5m幅ずつ道路部分)は、『道に面して向かい合ったお宅2軒の持ち物』という実に奇妙な道路まで現れることとなったのです。

更には、再建築をしなければセットバックの義務はないため、「建替えたお宅」と「建替え前のお宅」が混在するエリアでは、道幅の広さが凸凹の道路も数多く誕生しまう結果となりました。

セットバックがなされ道路となった土地は、所有権こそ本地の持ち主のままですが、当然建物を建てることは出来ません。

その上、建ぺい率や容積率の計算の基となる建築面積としての算入も不可となりますから、セットバックの範囲が判らないまま土地を買い、実際に建築確認を申請してみたら、想像以上のセットバックを課せられて、思い描いていた建物を建てることが出来なかったというケースもありますので注意が必要です。

また、建築終了後にセットバック部分をブロック塀などで囲んでしまう方もおられますが、これは建築基準法違反となります。

以前は行政も黙認している節がありましたが、近年ではかなり厳しいチェックをしていますので、こうした行為は絶対に避けるべきでしょう。

そして最も注意が必要なのが、「どこまでセットバックをしなければならないか」という範囲の問題です。

法令上は道路中心線から2mと定められていますが、道路の向かい側が崖地や川などの場合には、向かい側の分もこちらがセットバックしなければならないケース(一方バック)もありますし、

地域によっては確保するべき道路幅員を6mと定めている場所もありますから、これから土地を購入される場合や建替えをする場合には、しっかりと確認しておく必要があるでしょう。

また、「道路の中心線」というと道路の形態をしている部分の真ん中というイメージが湧きますが、これは誤った認識です。

道路のどの地点を中心線にするかは「あくまでも行政が決めること」となっていますから、自分で勝手に道路中心線を判断するのは大変に危険な行為と言えるでしょう。

では、「一体何時の段階で行政が中心線を決めてくれるか」ということになりますが、実はその判定は建築確認提出後ということになりますから、これから土地を買う方にとっては非常に不安ですよね。

「それでは、二項道路に面した物件なんか買えないのではないか」というお声も聞えて来そうですが、実は事前にある程度の予測を立てることが出来る方法もあります。

それは対象土地の両隣や、向かい側のお宅が建て替えをした際に、どこが道路中心線と判定されたかを調べるという方法であり、不動産取引の場ではこうした近隣建物建築時の資料をセットバック部分予想の根拠として示しているのです。

因みに近隣建物建築時の資料は、行政の建築確認を扱う部署などに「建築概要書」等の名称で保管されていますから、若干の費用を払うことで誰でも閲覧が可能となります。

但し、資料から割り出した道路中心線はあくまでも予想に過ぎませんから、物件を購入される前には行政へ事前相談に赴くなど、出来る限りの注意を払うように心掛けるべきでしょう。

さてここまで、二項道路とセットバックというテーマで解説を行って参りました。

記事をお読み頂ければお判りのこととは思いますが、二項道路には様々な問題点が未だ残されたままになっているのが現状です。

また、我が国にはまだまだ数多くの二項道路が存在しており、不動産の購入を考えるのであれば避けては通れない課題の一つとなっていますから、是非正しい知識を身に付けトラブル回避に役立てて頂ければと思います。

 

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